オトシンクルス
分類:ロリカリア科 Loricariidae ヒポプトポマ亜科 Hypoptopomatini オトシンクルス属 Otocinclus
別名:並オト Oto オトシン
分布:南米全域 (種によって生息地が違う)
体長:3cm~6cm (種によって異なる)
推奨水槽サイズ:20cm~
寿命:3~5年程
餌:茶苔(珪藻)人口飼料(植物質の物からフレークフードや動物質の物)生餌(イトメ等)冷凍餌(アカムシ等)
適正水温:20度~28度 (種によって許容水温も異なる)
適正水質:弱酸性~中性 軟水 (種によって適応可能水質も異なり、弱アルカリ性を好むものもいれば ブラックウォーター域に生息するものもいる)
相場:200円~1000円 (珍しい採集地から来るものは値段が高い傾向があり種類自体も違う場合も多い。)
オトシンクルスの種類詳細
オトシンクルスとは南米に広く生息するロリカリア科 ヒポプトポマ亜科 オトシンクルス属に属するナマズの仲間の総称になります。
共通して草食傾向の強い雑食で、吸盤のような口を持ち水草や石など平面状の部分に生える茶苔や微生物を舐め取って食べてくれる為、水槽環境において古くからクリーナーフィッシュとして親しまれています。
一般的にオトシンクルスで流通するものは海外ではOtoの愛称で呼ばれ、国内では商業的に『並オト』と呼ばれています。
並オトは見た目が違う一部オトシンクルス属や他のオトシン近縁種と区別されていますが、並オトと呼ばれるものたちも細かく判別を行うと数十種の種類が含まれていることはあまり知られていません。
並オトとして有名な種としてヴィッタートゥス(vittatus)、アフィニス(affinis)、ヴェスティトゥス(vestitus)がよく知られていますが、現在生息地の関係でアフィニスは流通することがほぼなく、ヴェスティトゥスに至っては専門家の間でも確定個体の存在が曖昧(同定困難)で謎の存在になってしまっています。
オトシンクルス属、論文記載種には以下のものたちが存在します。
【Otocinclus vestitus 1872】
【Otocinclus affinis】1877】
【Otocinclus flexilis 1894】
【Otocinclus vittatus 1904】
【Otocinclus hasemani 1915】
【Otocinclus hoppei 1939】
【Otocinclus mariae 1940】
【Otocinclus macrospilus 1942】
【Otocinclus bororo 1997】
【Otocinclus caxarari 1997】
【Otocinclus huaorani 1997】
【Otocinclus mura 1997】
【Otocinclus xakriaba 1997】
【Otocinclus tapirape 2002】
【Otocinclus mimulus 2003】
【Otocinclus cocama 2004】
【Otocinclus batmani 2006】
【Otocinclus mangaba 2010】
【Otocinclus juruenae 2016】
このうちflexilis、mimulus、cocama(ゼブラオトシン)は外見的特徴から並オトとして流通することはありません。
このほかに 【Otocinclus fimbriatus 1894】と【Otocinclus arnoldi 1909】という種が以前は記載されていましたが1997年にflexilisのシノニム(=同種異名 1つの種に対して複数の学名がついてしまうこと)と判断されました。
簡単に言うとオトシンクルス アーノルディはオトシンクルス フレキシスの別名扱いです。
現在オトシンクルス属で論文記載されているものの他にも多くの未記載種(sp.)や亜種、変種(var.)が存在し種判別、同定を困難にしています。
2017年現在流通している並オトの多くは主にコロンビア産、ペルー産、一部ブラジル産など南米各地に生息するオトシンクルス属の極一部が流通しています。
オトシンクルスの種別特徴
オトシンクルス ヴィッタートゥス 【Otocinclus vittatus 】
オトシンクルスで一番有名で基本ともいえる種。
大きさは3.5cm~4cm
南米の広い各地に生息し、数多い亜種が存在する。
特徴は体の中心に黒いラインが頭の先から尾鰭まで途切れず入る。
目は比較的大きくパッチリ、頭の形が上から見ると目の位置が広くなり両目と鼻先の三点でほぼ正三角形になる。
オトシンクルス マクロスピルス 【Otocinclus macrospilus 】
尾鰭の基部に黒く大きな丸印を持つ種
大きさは3.5cm~4cm
南米ペルー、コロンビア周辺に生息し、下記で紹介するsp.コロンビアやホッペイ同様、尾鰭に丸印を持つ似た種が存在する。
特徴は尾鰭に黒く大きな丸印を持ち、体にドット状の模様が斑に入り、体の中心の黒いラインも途切れたりドット状になることがある。
頭の形はヴィッタートゥスと変わらない。
尾鰭の基部の丸印は二つに分かれたり不明瞭な場合もある。
オトシンクルス sp.コロンビア 【Otocinclus sp.Columbia 】
マクロスピルス同様 尾鰭の基部に黒く大きな丸印を持つ種。
マクロスピルスの亜種と推測され、2016年~2017年、並オトで一番流通している種。おそらく8割以上がこの種と思われる。
大きさは3.5cm~4cm
分布はコロンビア周辺、マクロスピルスとは生息域もかぶっている。
特徴は体の模様が大きなドット状にならず、体の中心の黒いラインも丸印手前までは途切れることはない。
尾鰭の基部の丸印は二つに分かれることが多い。
オトシンクルス ムラ 【Otocinclus mura 】
オトシンクルス小型種で並オト内珍種。
主に混ざりとして流通するが、数年に一度オトシンクルス ムラとして流通することがある。
大きさは3cm
分布はブラジルという情報があったりメタ川(コロンビア)だったりはっきりしない。
特徴は大きくなっても3cmと小型で体の中心の黒いラインも太く他のオトシンクルスに比べて小さな目を持つ。
頭の形は上見で両目と鼻先の三点が二等辺三角形で他のオトシンクルスに比べると尖った印象。
オトシンクルス sp.パルヴス 【Otocinclus sp.parvus 】
某所でヴェスティトゥスではないかといわれていた種、のちに幾つかの相違点が見つかり違う種であることがわかったため、同定者によって『parvus』 (ラテン語で「小さい」という意味)の名が付けられた。
大きさは2.5cm~3cm
分布はコロンビア周辺
特徴はまず小さい、大きくなっても3cm オトシンクルス属の中でも最小の部類で、ラテラルバンド(体の中心の黒いライン)が尾びれ手前で一回膨らんでから細くなる。
オトシンクルスの飼い方
飼育は20cm程度の小型水槽からで良く溶存酸素量が多く濾過が効いていて水草が繁茂した環境を好みます。
水質や水温の変化に神経質な部分をもち、特に長距離輸送に非常に弱いため注意が必要です。
そのため導入時にはしっかりとした水合わせを行ってください。
臆病な為単独での飼育よりも同種複数の方がストレスなく飼育できます。
餌は茶苔や微生物を主食にしていますが複数を飼育している場合足らなくなりますので植物質の餌を中心に動物質の餌もバランスよく与えてください。
人口飼料に餌付き難いと思われがちですが、複数匹飼育を行うと餌付いた個体の真似をして問題なく餌付けることができます。
その際餌を探すことができる広めの底面が必要です。
水質の富栄養化と低床の汚れ、残餌の腐敗は病気の原因になるためこまめな水換えと低床の掃除を行う必要があります。
バランスの取れた環境で少数での飼育の場合、給餌しなくても水槽内で発生する苔や微生物で長期飼育が可能です。
オトシンクルスの注意点
オトシンクルスを含むナマズの仲間は病魚薬に弱いため注意が必要です。
動物質ばかりの餌を与えていると体調を崩したり寿命が短くなることがあるため、植物質の餌もバランスよく与えてください。
高水温時の溶存酸素量低下に弱いため夏季は強めのエアレーションを推奨します。
オトシンクルスが捕食された場合硬い骨格が釣り針のかえしのようにささり捕食した魚も被害を受ける場合がありますので注意が必要です。
個体によってはディスカスのような平たい魚の表面を舐めるものもいるため注意が必要です。
オトシンクルスは柔らかい茶苔以外の苔を食べるようには体の作りがなってなく、特に糸状の苔は口と歯の形状から噛み切れず食べることができません。 苔取り目的で飼育される場合知っておいてください。
オトシンクルスの混泳
オトシンクルスを攻撃、捕食しない大多数の種と混泳が可能です。
並オトで流通していても種が違う場合群れないことが多いです。
オトシンクルスの繁殖
オトシンクルス属の繁殖は大変難しく困難ですが、国内外問わず水槽内繁殖を成功されている方たちも多数います。
決め手となるのは低めの水温が一定期間続いたあと、水温の上昇と共に水換え等による水質の変化が契機になる場合が多いようです。
(この条件は南米各地の雨季の始まりと条件が重なるからという考察があります。)
産卵場所も種類によって石や流木、水草、水槽壁面など様々ですが、濾過排出付近やエアレーションまわりなど酸素を多く含んだ場所を好むようです。
オトシンクルスは雌雄割合もかなり雌多数に傾いている為、繁殖を狙う場合、雌雄を判別し揃える必要があります。
雌雄判別のポイントは体型(雌は腹部がふくよかで丸々していることが多い)鼻孔の大きさ(雄の方が鼻孔が大きいことが多い)総排泄腔の形などがあります。
孵化後の育成も種によって難易度が変わり、小型種ほど難しくなります。
生まれて数日はヨークサックの栄養で餌は必要としませんが、その後ブラインシュリンプを食べれるようになるまで数日さらに小さな飼料が必要になります。
餌は動物性の物だけでなく植物性の物も与える必要があります。 場合によっては生存率に大きくかかわってくるようです。
オトシンクルスの総評
オトシンクルスは掃除屋、クリーナーフィッシュとして水草レイアウト水槽の維持に力を貸してくれます。
注目されず影から支えてくれ、主役たちとレイアウトを引き立ててくれます。
そんな彼らです、決して使い捨てにはしないであげてください。
脇役ではありますが、水草レイアウト水槽を群れを作り遊泳する 『水景』 は誰もの心に癒しを与えてくれるでしょう。
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